2021/09/29 17:00

アイラ島2日目の朝。ブリッジェンドホテルの面接である。

イギリスにわたって2年目になるが、1年目は仕事とバイトに明け暮れていたので、社員として面接を受けるのはまだ2度目。しかも1度目は英語力の乏しさからかるいインタビューで終わってしまったので、ちゃんとした面接はほぼ初めての状態である。
この日は緊張しすぎて写真も撮ってなく、正直よく覚えてもいない。

とにかく緊張の面持ちでホステルのママに見送られ、バスに乗ってすぐにブレッジェンドホテル到着。
受付で支配人のローナに話をつけて、となりのロードの館へ案内された。ひどい緊張だったのを覚えている。
(この日の写真はないのでのちのものだが。一番右が支配人ローナ)

隣と言っても小さな林を挟んで隣なので、車に乗せられていった。到着すると大きな館の2階の一室に通された。
緊張している自分を見て、『大丈夫。気楽に話して』とローナは気を使ってくれた。

しばらくしてその隣の部屋に案内された。そこで対面したのがこの島のロードであった。
(これものちのちの写真)

なんでもアイラ島というのは小さな島で、田舎なので、基本的に外から人は観光以外では入ってこない。
日本でも同じだが、島の若者は都会にあこがれ大人になるとグラスゴーに出ていく傾向がある。
また、島では観光シーズンである夏の間は仕事があるが、冬場は観光系の仕事がなくなるので大半は外に出ていくそうだ。
そのため蒸留所などの定住の仕事以外は夏のアイラ島と冬の都心の二重生活をしているものが多いという。

このホテルのキッチンにアイラ島で生まれ育った若者が働いていたが、都会に出るために辞めたいということになり、そこにたまたま料理人経験もある私の応募があり面接にいたったのだ。

わたしからの要望はただ一つ。アイラ島に住みたい。それだけだったので、住み込みで働かせてほしい。それだけ伝えた。
するとむこうはすでにほぼ採用を決めていたのか。『OK。ローナ、誰かに当たって部屋を用意してくれ。』とすぐに動いてくれた。

しかし、ここから痛恨のミスを犯すこととなる。イギリスにおいては日本と違い、給料は自分で決めるものなのである。
私はこれができる!俺はこんな経験がある!だから〇〇ポンドくれ!!というかたちで給料を交渉するものである。

しかし私はそれを知らなかった。聞いてはいたが、緊張でどこかに吹っ飛んでいた。。

『それでは、君はいくらほしいんだい?』

え?いくら?そんなのわかんないよ。相場も知らないし。会社が決めるものじゃないの?
軽くパニクッてしまった。

『えっと、いくらくらいいただけるのですか?』

聞いてしまった。するとむこうも困惑した様子で、ローナの話し込む。
『彼くらいの経験があると相場はいくらくらいなんだろうなあ。。』

そして、私に言った。

『週200ポンドでどうだい?』

『!!!!』

200ポンド!日本でいうと3万円くらいの価値。しかし貧乏生活を続けていた私には一瞬大金に思えた。
また英語での会話の中の混乱と、イギリスでは普通らしいが週単位で給料を考えたことがなかったので、すぐに計算ができず。
英語ですぐに会話を返さなきゃといいう焦りと、なんだか大金の話をされているという困惑で、二つ返事に了解してしまった。

『は、はい! それでいいです!』

よくよく考えたらこれは大失敗。週200ポンドということは、1ヶ月でだいたい12,13万円。高卒の給料より安い。
いくら田舎のホテルとはいえ、きっと交渉のためにギリギリの安い値をとりあえず出しただけだろう。
その条件を飲んだことにむこうも驚いたはずだ。

ここから、この貧乏生活の続きと、誰よりも早く出勤し一番最後まで残るという勤務時間に苦しみ後悔することになる。。

まあ、なにはともあれアイラ島での生活が始まる。そこを除くと幸せで刺激的なアイラ島生活の始まりである。