2021/09/27 17:00
はじめまして。アビンアビン洋酒の図書館の館長、越川と申します。ここでは、洋酒や海外での経験をお話していこうと思います。
いきなりですが、時は2013年5月18日に遡ります。ヨーロピアンバーテンディングスクールを卒業し、アイルランド、ジャージー島、ウェールズと放浪し、仕事を探しにスコットランドのグラスゴーに滞在中にダメ元でDMしたアイラ島のホテルからの連絡をアラン島で受け取り、面接を受けるためにアイラ島に足を踏み入れようとするところから話は始めましょう。
アラン島の北部ロックランザからフェリーに乗り一度本土のグレートブリテンのキャンベルタウンのある出っ張り部分の中腹に上陸し、そこからバスで対岸まで、そしてそこからまたフェリーに乗りアイラ島にたどり着きました。当時交通網もよくわからず貧乏だった私はグラスゴーから海を突っ切って西へ西へとアイラ島めがけて真っ直ぐ進んでおりました。
飛行機を使わない場合、アイラ島の出入口は2つ。ポートエレンとポートアスケイグの2つの港(ポート)です。ウィスキーファンには知名度の高いポートエレンは若干距離が遠くなるのでフェリーの本数は少なく、基本はポートアスケイグ行きに乗ることとなります。
夢にまで見たウィスキーの聖地に胸を躍らせ、イギリスに住んで1年以上たっているにもかかわらず未だ実感がわいきってもいない中、ふわふわと夢の中にいるような面持ちで船からおりました。イギリスの田舎町を放浪していたのである程度耐性はついてはいましたが、降り立ってまず驚くのはその田舎っぷりです。港と言っても船着き場と小さなショップ、そして小さなホテルとそれに付属したレストランのみでした。
とりあえずその日は移動でかなり時間がかりだいぶ日も傾いていたので、予約していたアイラ島唯一のホステル(バックパッカーなどがよく利用するB&Bよりも安い安宿。都市部だと基本千円ほどで1ベッド借りれるが場所によっては倍以上するところもある。ちなみにアイラ島は少し高かった。)に向かいそこからまたバスを2台乗り継いだ。向かうはポートシャーロット。そう、ブルックラディの銘柄でおなじみのポートシャーロットだ。
アイラ島は南北40㎞東西32㎞ほどで主要道路は『入』の字に交差する2本の道路のみの小さな島。ポートアスケイグから向かうにはこの道路の交差点ブリッジェンドでバスを乗り換えなければいけない。主要道路の交差地点なのでそこそこの大きさの町かと思いきや、ブリッジェンドも例によってとても大きいとは呼べないホテルと、なぜか奥で狩猟用の銃も売っている郵便局付きの小さなコンビニ(小さいのに色々詰まっている)、そしてこのアイラ島を治める貴族『ロード』の住む大きな家(事務所かもしれない?)しかない小さな町。このブリッジェンドにあるホテルこそがのちに働くことになるブリッジェンドホテル、オーナーはこのロードである。
それはさておき、ようやくホステルに到着。さびれた宿に入るときいつもそうなのだが、システムがわからないので少し緊張する。しかし、ここの宿を切り盛りしているご夫婦がすごく素敵な方々だった。きれいな英語を話すイギリス人の奥様と寡黙だけどすごく優しい旦那様(たしかドイツ人だったか)夏の間だけこのホステルを切り盛りしているらしい。特に奥様には後々までずっとよくしていただき私のとってはアイラ島の母のような存在で時折遊びに行ったものた。
宿にたどり着きほっとした私は、その日少しだけ周りを散策した。といっても道と時折小さな建物があるだけの田舎道だが、人間以外の生き物はたくさんいる。どこにいっても羊!羊!羊ッ‼ この島は絶対人口よりも羊のほうが圧倒的に多い!!(勝手な感想)そしてときどきアルパカ、牛、馬などなど。予想外にウィスキーではなく田舎さ加減と動物との触れ合いを楽しんでしまった初日のアイラ島でした。